ショートストーリー~「深呼吸」~

お客様からクレームがきた。
原因は私の対応だったらしく
上司に呼び出され
こっぴどく叱られた。

自分としては誠意を尽くした
つもりでいたが、
まだまだ足りなかったのだろう。

沈んだ気分のまま家に帰り
夕食を作ったが、こういう時は
何を食べても美味しくない。

翌日、同僚がコーヒーを入れてくれた。
彼女は昨日のことを知っている。
しかし何も言わずニコッと微笑んで
デスクに置いていった。

いつもさりげない気遣いをしてくれる。

ほっとしたのも束の間。
先輩と営業に行くことになった。

小さな会社なので、
事務も営業もイベント企画も
何でもしなければならない。

“またお客様を怒らせたらどうしよう…”
という思いが残っているので
あまり気乗りはしなかったが、
もちろん断ることなどできない。

先方の会社に着いた。
入口で大きく深呼吸をしてから
先輩は中に入っていった。

商談はまとまらなかったが、
前向きに検討してくれていることは
伝わってきた。

帰り道、先輩が教えてくれた。
「以前、さっきの社長に
すごく怒られたことがあるんだよ。」

“えっ!?”
お互い親しそうに話していたので
そんな風には見えなかった。

「原因は僕の対応が悪かったんだけど…」
先輩にもそういうことがあったんだ。

「それ以来、お客様と会う前に
深呼吸をすることにしたんだ。」

“なぜ?”

「その人と、次に会えるかどうかは
分からないだろ?」

一期一会という言葉が浮かんだ。

「まぁ…そういうことだ。」

うーん、分かったような
分からないような…

まぁ、そういうことか。

(おしまい)

ACマークパズル

※物語はフィクションです。

by Dee


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