ショートストーリー~「ヒーロー」~

小学生の時、
私のヒーローは同級生ではなく
用務員のおじさんだった。

あまりしゃべらないが
いつも笑顔で挨拶をしてくれる。

学校で飼っていた動物の世話は
生徒たちが交代でしていたが、
エサの準備や掃除などは
全部おじさんがしていた。

春は花の手入れをしたり
夏はプール清掃をしたり
冬はストーブを直したり

何でも出来るおじさんが格好良くて
授業中も外で草刈りをしている姿を
窓から眺めていた。

ある日の朝、
担任の先生から
うさぎが死んだと知らされた。

みんな声を出して驚いた。
私も同じだった。
でも、そのうさぎはどうしたんだろう?

それから月日は流れ
卒業の時期が迫ってきた。

思い出作り
将来の夢

それぞれが一緒に過ごせる
残された時間で語り合っていた。

私はおじさんのところに行き
6年間お世話になったお礼を言った。

「そんなこと言われたの初めてだよ。」
照れながら答えてくれた。

その時思い出したので
うさぎのことを聞いてみた。

すると、
あの日の記憶をたどるように
上を向きながら教えてくれた。

朝、いつものように動物小屋に行くと
動かないうさぎがいた。
いくら揺すっても動かない。

死んだと分かった。
その場で泣いてしまった。
しかし、生徒達にはそのうさぎを
見せてはいけないと思った。

同じように悲しむだろうから…

みんなの明るい笑顔が好きだから…。

おじさん、
ありがとう。

でもね
おじさんの笑顔も
みんな好きなんだよ。

(おしまい)

ACマークパズル

※ストーリーはフィクションです。

by Dee


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