先日職場の敬老祝賀会で、笠置シヅ子の「東京ブギウギ」を歌わせてもらった。この曲は歌詞の中に似たような言葉が何度も出てくる。最初は1番と2番がごちゃごちゃになった。どうしたら間違えずに歌えるのか思案するうち、歌詞の構造に着目してみた。2回以上繰り返される箇所。同じような意味の違う言葉を拾い出す。線で結んでみる。すると、単純に暗記するより覚えられるようになった。この曲には「君」と「僕」が出てくる。歌っているのは「僕」。一度アローチャートでこの歌の世界を理解してみようと、私は描き始めた。

なんと明るい歌だろう。海の向こうの世界に向けて恋の歌が広がる。が、少しひっかかる部分も出てきた。
「東京ブギウギ   リズムウキウキ   心ズキズキ    ワクワク」

冒頭から終わりまで3回このフレーズが出てくる。みんながよく知っていて、自然に口ずさめるところである。「ズキズキ」。これは心が痛むという意味。ネガティブなイメージを持つ。「ズキズキ」と「ワクワク」はアンビバレントの関係ではないかと思ったのである。何がズキズキなんだろう。「僕」は恋をしている。「君」に。月の下で一緒に踊って歌って、夢を共有して。跳ねるような楽しさの中にあるズキズキという感情は、恋の酸っぱさなのか。

私はこの歌を歌った笠置シヅ子さんのことを調べてみた。そして歌を作った服部良一氏のことも。昭和22年、戦後まもなく東京は焼け野原だった。喪失感。価値観の転換。日本中が元気を出したいと思っていた時代。服部氏は新しい日本を象徴する世界へ響く歌、みんなが明るくウキウキするような曲を作りたいと思っていた。中央線の電車の中で突然メロディーが浮かび、次の駅で慌てて降りて、駅前の喫茶店で店のナプキンに音符を書いたと言われている。

笠置シヅ子さんの人生も波乱万丈であった。戦火で家を失い大変な暮らしの中、恋におちる。子どもを授かりながらもパートナーの病死により未婚の母となった。出産から4ヶ月後、日劇の舞台で「東京ブギウギ」を初披露することになる。頑張らなくてはならなかった。子どものためにも。最初に歌詞だけ見て描いたアローチャートに非常に明るい印象を受けた背景に、胸を締め付けられるような現実から「立ち上がってみせる」という不屈の精神、前を向いて歩いていこうという時代の勢いがあった。

シヅ子さんのパートナー。彼の母親は吉本興業創業者の吉本せい氏である。敬老祝賀会が無事終わり、もう練習の必要はなくなったのに、今でも私の頭の中で時々「東京ブギウギ」が鳴り響く。

 

(投稿者@PAO)