卒業の哲学
毎年、流行語大賞が発表される。2016年は「神ってる」だった。ノミネートされた言葉を眺めるに、言葉だけの力で流行るのではなく、「その言葉が事象をうまく表現できている」ものが並んでいることがよく分かる。
「ゲス不倫」「聖地巡礼」「復興城主」..
当たり前の話だが、その年の出来事・現象と共に言葉が在る。だから流行するのである。
それに対して、どこかからある日突然、スローガンのように与えられる言葉は、流行りそうで流行らない。少なくとも業界の枠を超えて「大流行」することはないし、批判があいついだりもする。
例えば、「イクメン」という言葉の登場。 「『イクメン』とは『子育てする男性(メンズ)」の略語。単純に育児中の男性というよりはむしろ『育児休暇を申請する』『育児を趣味と言ってはばからない』など、積極的に子育てを楽しみ、自らも成長する男性を指す。実際には、育児に積極的に参加できていなくても、将来的にそうありたいと願う男性も含まれる。」(2015 知恵蔵)というものである。
調べてみるとやはり、「2010年6月、長妻昭労働大臣が少子化打開の一助として『イクメンという言葉を流行(はや)らせたい』と国会で発言し、男性の子育て参加や育児休業取得促進などを目的とした『イクメンプロジェクト』を始動させたのをきっかけに、同語は一気に浸透した。」(2015 同)というように意図的に「流行らせたい」と発信されたものであった。
介護の業界では、「卒業」がこの「イクメン型」の言葉ではないかと勘ぐってしまう。
「デイサービスを卒業する」などと用いる。
私の職場ではまさに卒業の時期。学生たちが社会人になっていくのを見送る時期である。
「デイサービスを卒業する」と「大学を卒業する」をどうしても比べ、えも言われぬ違和感を覚えてしまうのである。
どなたか、私をスッキリさせてはくれないだろうか。