日々是好日

道が二手に分かれている。
まっすぐ進めばずっと二車線の広い道。もう一つは、左に曲がるあぜ道。曲がった方が職場までの距離は断然短く、対向車に出会いさえしなければこちらの方が近道。通勤途中で毎回一瞬迷う地点だった。遠回りして安定の道を行くか、それとも一台通るのがやっとの抜け道を選ぶか。

「急がば回れ」という言葉通り、本当に時間にゆとりがない日は広い道を行くようにしている。あぜ道は見通しがよく、かなり先まで視野に入るので、向こうから走ってくる車があるときも、あえてその道は避けて広い道へ行く。

いつしか私は、左に曲がるときは自分に運試しをするようになった。「この道を対向車に会わずに走り切ったら、きっと今日はいい日！」祈るようにハンドルを握る私は、バック操作に自信がない運転下手。それでも多少の冒険心は持ち合わせていて、何かに挑戦したいときはあえて狭い道を選ぶのだ。苦手な道をのりこえる勇気を求めて。

そのうちにだんだんあぜ道にも慣れてきて、対向車に道を譲るポイントも把握できるようになった。そうなると、以前よりもこの道を選ぶことにドキドキしなくなった。稲が育ち、辺り一面緑色になった田んぼの上を涼しげに風が吹き抜けていく。名前も知らぬ小さな花が、土手でたくさん揺れている。

どの道を選択したとしても、結局たどり着く場所は同じ。目的は果たせる。時間の流れとともに自分もまわりも変化していく。その道を選んだ理由がなくなり、また決断しなくてはいけないときがくるかもしれない。そのたびに自分にたずねる。何度も何度も。

生きていくことだって、その繰り返し。大事なのは、進むことなのだと思う。

投稿者　ＰＡＯ