日々是好日
どんぶりの最後に溶き入れる卵はあまりかきまぜないほうがいいと、教えてくれたのは昔アルバイトをしていた定食屋の兄ちゃんだった。熱を加えてつるんと輝く卵の白身を見ると時々思い出す。
身のこなしは指先の所作まで気を使って、と教えてくれたのは踊るのが職業の人の雑誌のインタビュー記事。プロ意識の高さに感動した。介護でも生かすように努力はしているが、まだまだ満足する域まで達していない。
街を歩く人からは全身から放たれるオーラや姿勢を。店に入れば接客を勉強させられる。
ツバメが雛にエサを運ぶ姿から子育てを、植物の成長する様子から生きる力強さを学ぶ。
世の中にあるものすべてが毎日更新され、エネルギッシュに満ち溢れている。なにげない会話の中に、何十年も心に染み込むメッセージが紛れ込む。
私の存在も誰かの記憶に残るのかな。最近娘や息子が使っている「モブキャラ」という言葉。漫画やアニメの中で、通行人などの群衆キャラクターのことを指すらしい。私も誰かのモブキャラだ。すれ違う人の波の中で揺れ動いている。周囲との距離を広げたり縮めたりするうちに、たとえ名前は忘れられてしまったとしても、私が発した言葉やエピソード、立ち振る舞いは消えずにどこかに残るかもしれない。私の胸にしまわれている数え切れないほどの形のないメモのように。
何を学んだのか確認するテストはない。ただ日々の暮らしの中に、応用編や実践の場がさりげなく用意されている。怯まず挑みたい。きっと明日は今日とは違う自分になっているはずだ。
投稿@PAO