ショートストーリー~「宝箱」~

たくさんの出会いがあり
たくさんの別れがあった。

その都度、
写真や思い出の品を
大事にしまっていた箱がある。

事あるごとに開いては、
懐かしく、また
勇気ももらっていた。

これまで生きてきた証と
言って良いかも知れない。

しかし、思いもよらない
災害にみまわれ、
なくしてしまった。

立ち尽くす余裕さえなく、
生きるだけで精一杯だった。

今も元通りとは言えないが、
以前より
落ち着いて過ごすことが
できるようになった。

失ったものは多いけど、
笑顔で暮らせるようになった。

ある日、
小旅行から帰ってきた友達が
そこで出会った人の話しや
撮った写真を私に見せ、
目を輝かせながらこう言った。

「心の宝箱がいっぱいになった!」

そうだ、私もまだ
なくしてはいないのだ。

(おしまい)

※ストーリーはフィクションです。

by Dee

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