かわいい子
ご利用者Iさんをお偲びするために訪問。
2歳年上のご主人とのお二人暮らしだった。
認知症と診断された後も笑ったり怒ったりしながらの二人暮らし。
ご主人は一人きりになり朝から晩まで一言も話さないようになってしまったと寂しがられる。
「話しかけてもずっと黙っとるんよ。」
「亡くなる3日前にはおはようと言ったらおはようと応えよったのに…。」
「どういうつもりか、夢にも出てこん。」
「まあ、色々あったが、かわいい子じゃった…。」
かわいい子と言われて、Iさんのことだ、さぞかし嬉しそうに微笑んでいらっしゃることだろう。
認知症と診断され、お料理もできなくなっていたけれど、自慢の井戸水で入れたIさんのインスタントコーヒーは砂糖とクリームの分量が絶妙で最高に美味しかった。
あのコーヒーももう飲めなくなった。
Iさんを思い出す沈黙の時間。
ご主人の入れた少し薄いコーヒーを飲みながら、あらためてIさんのいない空間の寂しさをご主人とかみしめる。
要支援1のご主人。
私の頭のなかにはアローがぼんやり浮かびだしている。
(投稿者@marua)