新婦の父
8月は東京に住む長女の結婚式。
71歳の父。
10㎏痩せた体に合わせるために
大切にとっておいた礼服をリフォームしたい。
妻は亡くなった。
新婦の父として立派に努めなければ。
ドキドキするよ。
ベルトは新しいものを買いたい。
入院前に壊れた時計も新調したい。
長男に街へ連れて行ってほしいのだけれど
失語症のために伝わらない。
父としての計画も、思いも、伝わらない。
もどかしいまま数日が過ぎる。
親子でもつながらないことがある。
そんなとき、そっと控えていた他人の出番なのかもしれない。
お父さんの思いを取り次ぎ、伝える。
親子の思いがつながる。
試着室の鏡に映った新婦の父は
「ご利用者」ではなく、「父」の姿だった。
8月には一足早く、
式場の新婦の父が浮かんで見えて、幸せのおすそ分けを頂いた。
(投稿者@marua)