日々是好日

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その夜は仕事で一睡も眠れなかった。 予定していた内容は変更され、目の前の状況を判断しながらどう動くべきか、即決して時間を費やす緊迫した泊まり。

朝日が昇り、街がまぶしく一日をスタートさせる頃、逆に私は今日与えられた使命のエピローグを迎えようとしていた。 家までの帰り道、途中に小学校がある。8時前後の子ども達の登校時間と、私の通勤時間のタイミングがちょうどぶつかって、運転席から小さな可愛らしいランドセル集団を見るのは、すでに日常の風景となっていた。夜勤明けは職場から自宅へ向かうので、同じ時間に同じ道でも子ども達の姿を反対方向から見ることになる。

なぜだろう。上級生が先頭を行き下級生を連れ立って歩く集団登校の子ども達が、キラキラと格別に輝いて目に飛び込んでくる。瞬間的にこう思った。

「この子達は、この国の未来をつくるみんなの宝だ。」

その言葉をかみしめながら、列をなす小さな背中達を見ていたら胸があつくなって涙があふれそうになった。校門付近の点滅信号の下で旗を持って立っている学校の先生に、情けない顔を見られそうになって少しだけ慌てた。

闇の時間と新しい朝のきらめき時間のギャップ感は、ものの感じ方を変えさせた。 不思議とここで、母がいつか言っていた言葉がよみがえる。「この歳になってやり残したことがあるとすれば、人の役に立ちたかった。ボランティアとかで。」私は朝のたくさんの子ども達を見て、未来に向かう彼らに何かをつなげたい、と思った。母の言葉と私の想いには一つ共通項がある。自分の存在意義を見出したいという点で。生きていた証を、爪痕くらいでもいいからチョコンとこの世に残したい。人と向き合うことで、強く自分の存在認識を高めたい。

今、ここに生きていることを実感したい。

そんな人間の本能のような気持ちは、私を含めたくさんの人が潜在的に抱えている。ふるいにかけて最後に大切なものが残るのを発見したときの気分に似た、なにげない朝の拾いものである。

投稿者@PAO

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