ショートストーリー~「濃い」~
結婚を機に、
都会から地方に移り住んだ私にとって
ここでの人間関係は一言でいうと
“濃い”のである。
家族や親せきであったり
会社の同僚であったり
学校の先輩後輩であったり
サークル仲間であったり…
とにかく、どこかでみんな
繋がっているように思え、
迂闊にものが言えないのである。
最初はそれをストレスに感じていた。
しかし今では新鮮な野菜をいただいたり
釣った魚をお裾分けでいただいたり、
近所のおばあさんが作った漬物をいただいたり…
都会では贅沢とさえ言える程の生活に、
ストレスのことなど忘れている。
お互いへの思いやりが自然なのだ。
巨大な交差点では、信号が変わると
一度にたくさん歩行者であふれかえっていた。
あの中で、見知らぬ人同士の関係など考えられず
無言で足早に通り過ぎるだけだった。
どっちが良いのかは分からないが、
今は毎日楽しく過ごしている。
それだけで十分だ。
(おしまい)
※ストーリーはフィクションです。
by Dee