ショートストーリー~「坂道」~

私が住む街は平野部なので
あまり坂道がない。

もちろん全くない訳ではないが、
自転車から降りて押す程でもない。

先日、週末旅行をした港町。
海があり、山があり、坂がある。

航路から入ってきた新しい文化は、
今では歴史的建築物となっている。

海の幸はもちろんだが、
お洒落な洋菓子もまた
港町の文化なのかも知れない。

旅に出ると、
自分の殻を破りたくなる。

理由は分からないが、
普段しないことをしてみたくなるのだ。

朝、暗いうちに起きた。
日常生活では有り得ない。

外は寒かったが
思った以上に気持ちが良い。

街灯を頼りに山影を目指し
一歩、一歩、坂を上る。

非日常にいるのに、
なぜか頭の中は
日常のことばかりだ。

朝刊を配るオートバイを見たのは
何年ぶりだろう。
この街の日常にいる私は
ほんとに非日常なのか?

少しずつ辺りが明るくなってきた。
もう少し行けば展望台があるはずだ。

しかしそこからがきつかった。
勾配が急になり、足の疲れもあり、
なかなか前に進まない。

後悔がよぎった。
それでも歩みは止めなかった。
そしてやっと、展望台が見えた。

あまり広くはないが綺麗に整備されている。
一段高くなっている台に上った。

眼下には街と海がひろがっている。

ちょうどその時、
水平線から
陽が昇ってきた。

(おしまい)

※ストーリーはフィクションです。

by Dee

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