ショートストーリー~「花木」~
5月になると咲く花がある。
名前は分からないが、
心が洗われるような花だ。
その花の木は大きくないが、
通勤路にあり
いつも通りながら見ている。
そこは元々保育園だったが
昨年別の所へ移転し、
今は更地になっている。
建物が壊される時、
その木も切られるのか
それとも移転先に移すのか
気掛かりではあった。
しかし今も木だけは残っている。
園児達の声は聞こえなくなり、
芽吹く前の枝だけの姿だが、
誰かのためではなく
その木自身のために
今年も花をつけるだろう。
僕は勝手にそれを期待し、
愉しみにし、待っているのだ。
ところでこの木を植えた人は、
何を思って植えたのだろう?
(おしまい)
※物語はフクションです。
by Dee