ショートストーリー~「参加賞」~
運動会で親子競技がある。
「かっこ悪いところは見せられないから」
と、子供に向けてなのか
観客に向けてなのか分からないが
夫がトレーニングを始めた。
仕事から帰ってくると
一人で外に出て行く。
特に何かを頼んでくることもなく
多少タオルやウエアの洗濯物が
増える程度なので、
私としては助かっている。
当日、暑い…。
この暑さだけで体力が奪われそうだ。
出番が近づき、
ウォーミングアップをしている。
そう言えば、いつもどんな
トレーニングをしてたのだろう?
今さらながら気になった。
いよいよ本番。
スタートの合図が鳴った。
横並びに一斉に走り出した。
この学年は二人三脚が親子競技だ。
少し遅れだした。
徐々に引き離されて行く。
無理もない。
30代後半でできた子供なので、
他のお父さん達のほうが若いのだ。
一番最後でゴールした。
しかし二人とも
満足気な表情をしている。
楽しめたようで安心した。
帰宅後、疲れたのか子供は早く寝た。
1か月以上も前から
トレーニングをしていた夫も
やや疲れているようだ。
順位は良くなかったが、
久しぶりに褒めてみた。
「かっこ良かったわよ」
私からのささやかな参加賞
・・・かな。
(おしまい)
※ストーリーはフィクションです。
by Dee