ショートストーリー~「雲」~
“今日も残業だなぁ…”
最近、子供とゆっくり話す
時間がとれない。
午前中に外勤3件
午後からも外勤2件に
報告書作成やデータチェック。
さらに、
上司から今朝頼まれた仕事に
後輩の書類確認と…
私だけが忙しいわけじゃ
ないけれど、新人が入っても
すぐに辞めちゃうし、
その後入ってくる気配すらない。
午後イチの外勤から帰ってくると
デスクにチョコレートが
置いてあった。
思わず喜びの声を上げてしまった。
後輩がお昼休みに買ってきて
差し入れをしてくれたようだ。
“後輩よ、私はそんなもので…
釣られるぞ!”
我慢できずに封を開け
ひと口ほおばったところへ
上司が戻ってきた。
目が合った。
ふぅ~とため息をついたあと
小さくつぶやいた。
「そんなヒマあるんだぁ」
軽い嫌味がトゲのように刺さった。
しかし、
いつもはそんなことを
言わない上司だ。
みんな疲れてるのかなぁ。
次の外勤に行こうと外へ出た。
空には白い雲が流れていた。
今日は子供に
アイスでも買って帰ろう。
(おしまい)
※物語はフィクションです。
by Dee