ショートストーリー~「ツリー」~

いつもこの季節は
みんな笑顔に感じられた。

今まではそれを恨めしく眺めていた。
もちろん、ひがみ根性であることも
自分で分かっていた。

しかし今年は違う。
私も笑顔になっている。

電飾がついた大きなツリー。

うつむいて通り過ぎていた
待ち合わせの場所で、
辺りを見回しながら立っている。

気温は低いのだろうけど
目に映る赤と緑の世界に
暖かく包まれているようだった。
どこからか鐘の音が聞こえた。
それは約束の時間を教えてくれる
音でもあった。

さっきよりも人が増えている。
この時間での待ち合わせが多いのだろう。

“これじゃ探しにくいなぁ”

でもあまりウロウロすると
すれ違いになりそうで、
言われたところから離れなかった。

“きっと見つけてくれる”

その気持ちは揺らぐことがなかった。
が、20分が経った。

周りを見たり、メールを見たり
何度も何度も繰り返し…

少しずつ人影が減っていく。
不安と寒さを感じるようになってきた頃、
また鐘の音が聞こえた。

“時間を間違えているのかも知れない”

自分に嘘をついていることに
気付いていた。

(おしまい)

※ストーリーはフィクションです。

by Dee

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