ショートストーリー~「ロープ」~

父は仕事柄、ロープの結び方を
何通りも知っていた。

子供の頃に教えてもらった記憶はあるが、
覚えることはできなかった。

先日、郊外を車で走っていると
1台の軽トラが路肩でとまり
男性が手をあげていた。

聞くとガス欠したらしい。

近くのスタンドまでは10分程。
引っ張ってあげるにも牽引ロープがない。

スタンドまで行って助けを求めようかと
思っていると、男性が荷台から
ロープを取り出した。

「引っ張ってもらえる?」
と言われたのでうなずいた。

男性が手をかざしているところに
バックでとめると、あっと言う間に
2台をロープで繋いだ。

何結びと言うのかは分からないが、
かつて父が教えてくれた
結び方のように思う。

スタンドに着くと、
男性はお礼を言いながら
缶コーヒーを1本くれた。

あまり大したことはしてないのだが、
こちらもお礼を言って両手で受け取った。

父がよく飲んでいた
缶コーヒーと同じラベルだった。

(おしまい)

※ストーリーはフィクションです。

by Dee

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