夫が急逝してから
女手ひとつで二人の子供を育てることは
決して楽ではなかった。

不憫な思いをさせまいと、母として
真っ直ぐに育つようにと、時には父として
正面から向き合い、ぶつかり、受け止めてきた。

伸び盛りの二人を育てるために
いくつかの仕事を掛け持ちすることも
珍しいことではなかった。

そんな姿を見ていたからだろうか、
家のことは良く手伝ってくれるので
子供ながら感謝している。

昼も夜もなく、
毎日ひたすら働いていたので
学校行事にはほとんど参加できなかったが、
唯一欠かさず行っていたのは運動会だった。

前日に買い物に行き、
当日は朝早くからお弁当を作った。

遠くから成長を見守るのが楽しみであり、
普段遊びに連れて行ってあげることができず
せめてもの罪滅ぼしの気持ちもあったかも知れない。

毎年毎年、走るスピードが速くなり
力強い競技になっていくのを観ながら
小さな幸せを感じていた。

下の子が最後の運動会という時、
職場の同僚が急に仕事を休むことになった。
遠くに住む親が倒れたらしい。

上司から、その日仕事に出てくれないかと言われた。
私が休みをとっている理由を知っているので
言いにくそうだった。

他に代われる人はいない
誰が悪い訳でもない
私しか…いない

家に帰り、子供に説明した。
意外にもあっさり受け入れてくれた。

私が心配しすぎていたのかしら?
それとも、行かないほうが嬉しいのかしら?

運動会の日、仕事が終わり家路を急いだ。
早く帰ったからといって、どうと言うことはないのだが
早く顔を見たかったのだ。

下の子がしょんぼりしている。
何かあったのだろうか?
やっぱり寂しかったのだろうか?

「どうだった、運動会は?」

顔を上げた目は潤んでいた。

「一等賞がとれなかった…」

そうか、そうだったのか。

「ママに…
いつも頑張ってるママに
一等賞をあげたかったのに…」

(おしまい)

※ストーリーはフィクションです。

By Dee