父が最初の癌で入院した時、
僕は中学生だった。

休みの日に面会に行くと、
隠れてタバコを吸ったことが
看護婦さんにバレて怒られていた。

“隠れて吸うなんて…
オレと同じじゃないか”

ある時、
珍しく父が頼み事をしてきた。
床頭台に飾る飛行機を買ってきて欲しいと。

“あまり大きいのは置けないなぁ…”

街に出て探してみたが、
子供のおもちゃばかりだ。

どこに飾るのかと思うほど、
とにかく大きい絵画があるお店に入った。
1mを超える象やキリンやヒョウの置物がある。

“サイズが違い過ぎる。間違ったな。”
と思い店を出ようとした時、
ゆらゆら揺れる飛行機があった。

何と言う名前か分からないが、
バランスを取りながら3機の複葉機が
揺れながら回っている。

“これだっ!”
僕自身も気に入った。

次の面会で持っていくと、
ちょうど父の会社の同僚も来ていた。
あいさつを済ませ、早速箱から取り出し飾ってみた。

「おお!これこれ!」父が叫んだ。
「単葉機じゃなくて複葉機が欲しかったんよ!」

“それは聞いてないぞ…”

「さすが倅!」同僚のおじさん達も囃す。

“まぁな”

家に帰ってふと気付いた。
なぜ複葉機なんだろう?

父は特攻隊に憧れて志願したが、
年齢が達していなかった為
入隊できなかった過去を持つ。

憧れていたのは
“隊”ではなくて、“空”だったのだろうか。

(おしまい)

※物語はフクションです。

by Dee