ショートストーリー~「証」~

大阪府北部を震源とする地震で、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。
(アローチャート研究会)


学校が休みの日は、
喫茶店でバイトをしている。

個人経営の小さなお店で
お客さんはほとんど常連さんだ。

開店してから何年経つか
私には分からないが、
設備はかなり古くなっている。

当然、食器洗浄機などはなく、
一番の悩みは手洗いするため
手の皮が荒れて
ボロボロになることだ。

特に冬はひどい。

こんな手で注文を運びたくないが
そうも言っていられないので、
なるべく見られないようにしている。

ある日、
常連のおばあさんがいらっしゃった。
必ずカフェオレと卵サンドを注文される。

「いつもの、ね。」
席に座ると同時に言われた。
「はい。いつもの、ですね。」

テーブルに
カフェオレと卵サンドを置いたあと
おばあさんが私の手を両手で包んだ。

「がんばってるねぇ。」
ボロボロの手のひらを撫で、
微笑みながら言われた。

「いや、そんなに…」

むしろ、おばあさんの
ぶ厚く日焼けした手は
働き者の証だと思う。

(おしまい)

※ストーリーはフィクションです。

by Dee

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