ショートストーリー~「雷鳴」~

子供の頃から
雷は嫌いだった。

耳を塞ぎ
目を閉じ
じっと座っていた。

もう大丈夫かな?と思い
目を開けたとたん

“ピカッ”と光ると
雷鳴が聞こえる前に
全力で耳をおさえた。

今はもう
そこまでの反応はしないが、
嫌いなことに変わりはない。

先日、仕事帰りに
バス停で並んでいると

遠くに見える黒い雲から
かすかに雷鳴が聞こえた。

“早くバス来ないかなぁ”

外にいるよりも
バスに乗ったほうが
少しは気持ちが落ち着く。

黒い雲がだんだん大きくなっている。
こっちに近づくにつれ
音がハッキリと聞こえる。

列の前のほうで
5才くらいの女の子が
下を向き、両耳をおさえている。

お母さんが手を繋ごうとしても
耳から離さない。

“早くバス来ないかなぁ”

(おしまい)

ACM-P

※ストーリーはフィクションです。

by Dee

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