ショートストーリー~「ハーモニカ」~
父は若い頃バンドをしていたらしい。
当時はそれだけで
不良扱いされていたようだ。
聞いてくれる人と一緒に楽しむことは
大きな魅力があり
捨て切れるものではない。
ギターを弾いていたと言うが
ハーモニカも中々上手い。
子供の頃は父の演奏で
よく歌っていた。
定年退職してからは幼稚園などに行き
ハーモニカを吹いて子供達と楽しんでいた。
二年前から体調が思わしくなく
入退院を繰り返していたが
先日、
家族が見守るなか眠るように旅立った。
知らせを受けた園長先生が
一本のビデオを持ってきてくれた。
父がハーモニカを吹き
園児たちが元気いっぱいの声で歌っている。
“このビデオを流せないだろうか・・・”
葬祭会場にお願いしてみた。
在りし日の姿と歌声が流れる中
参列された方々も温かい眼差しで
見送ってくれた。
(おしまい)
※物語はフィクションです。
by Dee